海外でのクライミング、登山、トレッキングレポート

 

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海外トレッキング2011 ツールドモンブランとシャモニトレッキング


2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

用語の説明

Tour du Mont-Blanc
(以下 TMB)
フランス、イタリア、スイスの三国にまたがるヨーロッパアルプス最高峰モンブラン(4,808m)や針峰群を取り巻く全長160キロの壮大な周遊ルート。車や馬を利用して一周する人、氷河へ向かうアルピニスト、マウンテンバイク走者、トレイルランナーなど 、多くの人が、様々なスタイルで訪れる。
シャモニ モンブラン山頂までわずか6キロの町。正式にはシャモニー・モンブラン。観光客から登山者まで幅広く親しまれている山岳リゾート地。ここから、交通手段を利用して無数のトレッキングルートへ出かけられる。

「ツール・ド・モンブラン(TMB)」トレッキング記録の要約(YFメンバー 稲垣 隆)
まさかモンブランの地に自分が立っていようとは…(YFメンバー 伊藤 寿和子)
 
ツールドモンブランとシャモニトレッキング報告(YFサポーター 鈴木佐智子)

 

「ツール・ド・モンブラン(TMB)」トレッキング記録の要約


2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

 今回のトレッキングは、YFクラブで企画されたイベントであり、7日間でTMBトレールの半周(3泊4日の長いトレッキング)と、 シャモニ市街から簡単にアクセスできる展望台数ケ所とそれらからの短いトレール(日帰りのトレッキング3行)を歩こうというものである。

 7月18日に成田空港を出発し、ドバイ空港へ。数時間待ちの後、ジュネーブに飛び、トレッキングのベースとなるシャモニー・モンブランの中心街にあるホテルには、翌日の午後にチェックインした。 そして20日からトレッキングの開始である。

 私にとっては、外国の山(トレッキング)は初めての経験である。従って、4か月前に参加することが決定すると準備も周到なものにならざるを得ない。 勿論期待が大きいことは当然であるが、全てが不案内であるだけに、YFクラブのスタッフからの情報を頼りに、あれこれと準備を開始することにした。 細部は省くが、ユーロへの換金・装備品等の準備など遺漏の無いようチェックオフリストまで作成して、少しづつ準備を進めた。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

 今回のTMBの目的を自分なりに、2つ掲げてみた。一つはTMBトレッキングを楽しみ、ヨーロッパアルプスとはどんな山かをしっかりと見て来ること、 二つ目には少しでも多くの人との出合いを楽しんでみたいと言うことである。だから、その準備の中にはフランス語を毎日1時間勉強することも含めるという力の入れ様であった。

 参加者全員で行なった事前訓練の南八ツ岳の縦走や、事前に単独行で行なった爺ケ岳〜針ノ木岳縦走では、 不安のある膝や足は何とかもちそうだと分かったものの、相手はヨーロッパの山道であり、1週間いわば「山浸り(やまびたり)」と言う事になると全く実績がないだけに、不安は拭えない。

 ちなみに今回のトレッキング(短いもの3行、長いもの1行)を簡単に紹介してみよう。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 短いトレッキングルート;左がブレバン起点 右がフレジェール起点

 短いものの最初は、20日に行ったもので、シャモニ市街からテレキャビン(ゴンドラ)にて、エギュードミディ展望台(3,842m)に登り、プランドラギュー(2,299m))にゴンドラで戻り、 そこから約3時間のトレッキングでグレース氷河(モンテンベール駅 1,950m)に到着し、これを見物の後、モンテンベール鉄道でシャモニに日帰りするものである。

 2つ目が25日に行ったもので(上図参照)、シャモニのテレキャビン駅からゴンドラにてプランプラ駅経由で更にブレバン展望台(2,525m)に登り、 そこからプランプラ駅(2,062m)まで約1時間半のトレッキングをするものである。 このトレールの近くにはそそり立つ岩壁や針峰が多いため、至る所で壁に取り付いているクライマーを見かけることができる。中学生らしき集団がこれに向かう風景も見かけた。さすがに山のメッカと納得した。

 3つ目が26日に行ったもので(上図参照)、シャモニからシャモニバスにてレプラに入り、テレキャビンにてフレジェール駅経由ラデックス駅(2,385m)に登り、 そこからラックブラン(白い湖)を見物してフレジェール駅(2,000m)まで約3時間半のトレッキングをするものである。

 3つとも標高差350mから450mを下るというもので、道は平坦であり、危険な箇所もなく、楽な行程である。20日以外、25日・26日とも天気に恵まれ、 対峙するモンブラン方面の雄大な山容やそそり立つ急峻な針峰(しんぽう)群の展望が素晴らしく、至福のトレッキングをすることが出来た。

 また、20日に登ったエギュードミディ展望台では、生憎の悪天候のため、ガスで期待の展望が全く得られず、モンブラン山群はチラリともお目に掛れず仕舞いであったこともあり、 リベンジとして25日早朝に再度ここに登ることになった。

 この日は最高の天候に恵まれ、前日の雪で純白に雪化粧したモンブラン山群やシャモニ針峰群はもとより、ドリュー、グランド・ジョラス、マッターホーンまで望め、期待通り圧倒的な迫力で迫るアルプスの絶景に巡り会えた。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング
モンブラン山群 奥がモン・ブラン ラックブラン湖とグランド・ジョラス シャモニー針峰群

 展望台では、喜色満面の多くの観光客に交じり、幾組かの本格的なクライマー達が、これからの厳しい挑戦に、緊張の面持ちで静かに重装備の点検や俯瞰(ふかん)するルートの確認等をしているのが印象的であった。

 日本の山群と決定的に違うところは、やはり針の様に尖った峰々が林立する荒々しい針峰群の山容ではないだろうか。槍ケ岳よりも尖った高い山が無数に存在する物凄さだ。

 それともう一つは、日本では見られない氷河(大分後退してはいるが・・・)が、TMBトレールの至る所で間近に望めることだろう。 急峻な針峰群とその間に流れるたおやかな氷河、そのコントラストが実に見事で、見る者を感動させずにはおかない。

 一方、長いトレッキングは、21日にコンタミンのラゴルジュ(フランス側 1,200m)から登り始め、24日にクールマユール(イタリア側)に下る迄で、 TMB一周の西側半分を廻ると言うものである。宿泊は全てトレイルの途中にある3つの山小屋である。

 今回の行程としては、初日がバルム小屋(1,708m)までの約2時間(実歩行時間1:24)、2日目がモッテ小屋(1,949m))までの約7時間(実歩行時間5:39)、 3日目がエリザベッタ小屋(2,300m)までの約4時間(実歩行時間3:00)、そして最終日がクールマイユール市街までの約4時間半(実歩行時間4:03)、三泊四日のトレッキングである。

 全般的に言えることであるが、TMBのトレールは良く整備され、急登も急下りもなく、悪場も全くない。 日本流に難易度を付けるとすれば、★あるいはバリエーション・ルートの場合(残雪のあったフォーのコル2,710mの下り)で★★☆といったところであろうか。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング フォーのコルからグラシェ村へのトレッキングコース

 フランス・イタリアはもとより、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリヤ・日本等色々な国からのトレッカーも多い。 中には家族ずれで、場所によっては小さな子供まで一緒に歩いている。日本同様にソロのトレッカーも勿論多く見られた。 またトレイル・ランニングの人達やトレイル・サイクリングの人達にも出合うことが結構多かった。(弓を背負って追い越して行った若い女性がいたが、あの人は何だ??)  そして、皆すれ違いざまに、「ボンジュール!」と声を掛けあう。時には向こうから、「こんにちは!」などと日本語の挨拶をされたりして、慌てて、「ボン・・・さよなら」と応答する場面もあった。

 どのトレッカーも一様に歩く速度が速く、寒い雨の中、半ズボンにポンチョ姿で我々をどんどん追い越して行く。 (但し休み時間は長い様で、我々が追い越す場合も多々あった)正にウサギとカメである。

 気温は天気さえ良ければ、この時期は概ね日本の各アルプス縦走時のそれと同じ位だろうか。 但し我々がセイニュのコル(2,513m)での国境越えの際のミゾレや、エリザベッタ小屋(2,300m)の朝に経験した様に、真夏でも氷点下になり周囲の峰々が一夜にして真っ白に様変わりしているなどということもある。 その点は日本の夏山よりは厳しいかも知れない。

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セイニューのコルでフランスからイタリアへ エリザベッタ小屋南面のフォルテ山(2,758m) 左が前日、右が翌朝の様子

 山小屋ではウナギの寝床は日本と同様であるが、水洗トイレでシャワー付き、洗濯・ゴミ捨て自由(ゴミ缶完備)というのは有難い。 車が小屋までアクセスでき、小屋にゴミ缶が完備されているためか、あるいはマナーがいいのか、トレッキングトレール上にゴミが捨てられているのをついぞ見かけなかった。

 小屋のスタッフ達も日本人と分かると実に親切に英語によって対応してくれ、気持ち良く過ごすことが出来た。 (但し、ウォシュレットは山小屋では勿論のこと、ホテルでもレストランのトイレでも見かけなかったのはお国柄か・・・?)

 また食事は、その土地特有のボリユ—ムのある暖かい料理が何品か大きな器で出される。それらの料理を同じテーブルのトレッカー同志で分け合って食べる内に、会話も弾み、和気あいあいの内に食事が進む。

 現にモッテ小屋では、隣に座ったフランス・ブルターミュ在住の両親と子4人組(21歳の長男から15歳の長女までの4人)とは意気投合し、一緒に写真を撮って、メアドの交換まですることになった。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング
マエル一家の6人とその友人

 最も長い三泊四日のトレッキングでのデータとしては、多少の誤差はあるとして、全行程の所要時間が約18時間、休憩時間が約4時間/15回(これは昼食時間を含めて)で、概ね1時間平均12分間位の休憩という勘定だ。 ゆったり休みながらのトレッキングであったことが分かる。

 さて、トレッキング以外のことについても少し触れてみたい。シャモニ市内のホテル宿泊の際には、昼食と夕食は外食となる。何時も同行の4人が一緒で、 「今日は何にする?」と相談の上、何品かの料理を選び、それらを四等分にシェアして食べると言う、山仲間ならではの食事方法も楽しめた。 (フランス料理や食材に疎い(うとい)私は、彼女達に全面的に「おんぶにだっこ」でお任せであったが・・・) 

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 あっという間の10日間ではあったが、短い体験から当初の2つの目的を振り返ってみると、ヨーロッパアルプスの山を見ること・楽しむことは十分に堪能できた様に思う。 また同時に出合いについても、多くの人達と接することが出来たし、また小屋を初め、花や動物や食物など山以外の風物との出合いも多く、十分満足しているところである。

 2つ目のフランス語による意思の疎通ということに関しては、話すことについては単語を並べるだけでも相手は理解しようとしてくれるが、フランス語で話せば、当然のことながらフランス語が返ってくる。 これを聞きとるのは全く駄目であった。やはり語学はヒヤリングを大事にするべきだなーとあらためて実感したしだいだ。

 とにかく天候にさえ恵まれれば、TMBは最高に楽しい快適な山旅ができること請け合いである。 ヨーロッパアルプス巡りの山旅は、70歳を過ぎた私にとって、初めての外国での山行きであったが、 良いリーダとメンバーに恵まれ、また心配された膝や足首の故障も出ず、楽しい思い出深い、正に「感動の宝庫」としての山旅となった。

 これでまた、日本の山々を別な視点から楽しみ、愛(め)でることが出来るのではないかと思っている。

(YFメンバー 稲垣 隆)

 

まさかモンブランの地に自分が立っていようとは…


2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

 私は約1年半前に登山を始めました。ザックとレインウェアだけを購入し、靴は借り物、服は普段着で登り始めました。どの山なら自分の体力で登れるかもよくわからなかったので、 YFサポーターに自分のレベルに合った山を聞いてYFイベントに毎月参加していました。

 最初は、日帰り登山で、日ごろの運動不足とストレスが解消できればと、気軽に始めた登山でした。何回か日帰り登山に参加するうちに、テント泊での1泊登山を勧められるようになり、道具も徐々に揃えるようになりました。 こんなふうにちょっとずつ重い荷物を背負い、距離を伸ばして、無雪期登山だけではなく、その年の冬には、前から興味のあったYFでの雪山登山のイベントにも参加するようになっていました。

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 そんなある時いつものようにYFイベントに参加していたら、YFサポーターからツールドモンブランのイベントの話を聞きました。 TVと写真くらいでしか見たことのないモンブランを実際この目で見たいという気持ちはあったものの、参加するにはためらいがありました。 テント泊でも最大2泊しかしたことがない私が、ツールドモンブランと、シャモニトレッキングと合わせて7日間連続して歩けるのかと。 そういう不安を伝えたところ、いつも通り毎月イベントに参加して鍛えたらいいと言ってもらったので、それなら自分にもできるかもと思い、このイベントに参加することに決めました。

 その後、YFイベントに毎月参加して準備を重ね、いよいよ当日を迎えました。7月下旬は晴天率が高く、天気は安定していると聞いていたので、歩きやすいのではないかと想像していました。 ところが実際はトレッキング中、雨の日が多く、時には吹雪の中、雪道を歩くこともありました。しかし、歩きにくく体力的に辛いという記憶はあまり強くありません。 そんなことよりもむしろ、天候が不安定なことで改めてアルプスの山々の標高の高さを肌で感じ、日本の山とはまた一味違うスケールに圧倒され、感動していました。

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 1年前の私はモンブランなんておろか、テント泊でもハードルが高いと感じていました。 それなのに、10日間のこのイベントに参加し、何泊も山の中で過ごし、7日間も歩き、一緒に行った方々の足を引っ張ることなく、無事帰ってくることができました。 これも、初心者の時から、登山の歩き方や、道具の揃え方を教えてくれたYFサポーター鈴木さんのおかげです。ありがとうございました。

(YFメンバー 伊藤 寿和子)

 

2011年 海外トレッキング ツールドモンブランとシャモニトレッキング報告

雪をまとった4,000m級のモンブラン山群、そこから流れ落ちる氷河、険しい氷壁、鋭く尖った針峰群。 天候が安定する7月中旬のヨーロッパアルプスでは、当たり前のようにこんな景色が見られるものと 誰もが思っていた。

しかし、この夏は日本と同じく不安定な天候が続き、このところ、晴天は3日に1回程度しかない。 メンバーにとっては「想定外」の天候の中、連日予定時間内に歩けるだろうか、残雪の峠越えは大丈夫だろうか・・・・と 不安に思っていた人もいたかもしれない。しかし、それはそれ、どんな天候であれ、ヨーロッパアルプスはきっと、 私たちに素晴らしい体験をさせてくれるに違いない、と期待に胸膨らませ、「海外トレッキング2011」はスタートした。

 

2011年7月18日 晴れ

成田空港 ⇒ ドバイ空港(経由地)

 

2011年7月19日 雨

ドバイ空港 ⇒ ジュネーブ空港 ⇒ シャモニ ホテル泊

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24時間眠らないドバイ空港 空港内のエミレーツ 無料レストラン 空港内の無料充電コーナー 乗換後は空席で爆睡中
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ホテル到着後は、小雨の中、さっそく情報収集に歩きまわった
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日本でもお馴染みのアウトドア用品も豊富
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山の家(シャモニガイド組合) モンブランを指差すソーシュールとバルマの銅像

 

2011年7月20日 【シャモニトレッキング1日目】 曇り 山間部は雪⇒曇り

シャモニ(1,036m)<ロープウェイとエレベーター> ⇒ エギュイ・デュ・ミディ(3,842m)<ロープウェイ> ⇒ プランドレギーユ(2,317m)<徒歩> ⇒ モンタンベール(1,913m)  ⇒ 氷の洞窟<テレキャビンと徒歩> ⇒ モンタンベール<鉄道>⇒ シャモニ(1,036m) ホテル泊

時差 (−7時間差)のおかげで、早朝から目覚めはばっちり。時差ボケ解消と足慣らしにと、早速、展望台へ出発! 本日は、山間部ではなんと降雪中。視界が無いのは承知で、この日一番(朝9時)のロープウェイに乗車し、 わずか20数分後には、富士山より高い展望台へ到着していた。 もちろん凍てつく展望台からは、そこに有るはずの山々は見えなかったが、快晴日のリベンジを誓って下山した。

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山頂付近(3,842m)は視界ゼロ、-3度

正午前、途中駅プランドレギーユでロープウェイを下車し、モンタンベールまでトレッキングをする。 時折見える雪壁や谷間の町、咲き乱れる高山植物に感激しつつ下るコースはいい足慣らしになった。 メール・ド・グラス氷河と氷河をくり抜いた氷の洞窟を散策。何百万年も前の水滴が頭に肩に落ちてくる。 トレッキング中、アルプス三大北壁の一つグランドジョラス(4,208m)、ドリュ針峰(3,754m)が一瞬、その姿を現した。

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いつまでもついてくるロバ達 一瞬見えたドリュ針峰(3,754m) モンブラン山群最大の氷河メール・ド・グラス氷河 頻繁に水滴が垂れてくる氷河洞窟
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シャモニへ下るモンタンベール鉄道

 

2011年7月21日 【TMB1日目】 雨⇒曇り⇒晴れ

シャモニ(1,036m)<車> ⇒ ゴルジュ(1,210m) ⇒ バルム小屋(1,706m)泊

今日は、4日間の縦走、ツールドモンブランの初日。レインウエアを着ての出発となった。 ノートル・ダム・ドゥ・ラ・ゴルジュ教会脇の橋を渡り、氷河が削ったスラブ状の石畳からスタートする。 はやる気持ちを抑え、息が上がらぬペースでゆっくりと登り始めた。

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古代ローマ時代に岩を切り崩して造られた道  雨が止んだ 正面にはバルム小屋と明日越えるコルが見える

カウベルが鳴り響く牧草地に近づく頃には、雨は完全に上がっていた。明日、歩く予定のルートを見上げて みると、降雪直後の山景が広がっている。美しい。今年の峠は残雪が少ないと聞いて一安心していたが、 不安定な天候は、7月になっても雪を降らせたのだ。明日、見舞われるかもしれないガスや降雪に備えて、 メンバーの一人一人が大きな地図を広げ、今後のルートを確認する。

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まるで朝のような夜7時 手作りポタージュが冷えた体に染み渡る チーズは、この先どこで食べても美味しかった

 

2011年7月22日 【TMB2日目】 曇り⇒晴れ

バルム小屋(1,706m)⇒ ボンノムのコル(2,329m)⇒ クロワ・デュ・ボンノム(2,479m)⇒ フォー峠(2,665m) ⇒ グラシエ村(1,789m)⇒ モッテ小屋(1,870m)泊

朝、目覚めれば、雪は降っていない。視界も良好、今日は、乾いた体で歩けそうだ。 清流沿いを軽快に登り、徐々に標高を稼いでいく。大休止したボンノムコルの避難小屋が小さくなる頃、そういえば、 「切れ落ちている岩場があるから気をつけて」と聞いたことを思い出したが、それはいったいどこだったのだろう? 快適な登りが続いた。

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  ボンノムのコル避難小屋で大休憩  

クロワ・ドゥ・ボンノムのケルンから先は、雲間から時折見える景色を堪能しながら、残雪にステップを刻んだ。 しばらく登りが続く。この辺で少し休みたいな、と思う頃、目指していたフォー峠に到着した。

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晴れていれば、セイニュのコル(2,516m)やグラシエ針峰(3,816m)が見渡せるコル
2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

フォー峠から先は、標高差約900mを一気に下るので、目の前の景色は、歩くにつれ、次々と変化していく。 岩が露出した残雪から始まり、雪を抱いた峰々が頭上に来た頃、数百メートルに渡るなだらかな滝が現れる。 湿地帯や高山植物の草原を抜けて、牛の放牧地帯を下ると、今晩泊まるモッテ小屋があるグラシエ村まではあと少しだ。 冬の終わりから春までを歩いたようだった。

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もうすぐモッテ小屋
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モッテ小屋の郷土料理はどれも絶品。特に牛スジ煮込みは、忘れられない一品。
2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング

 

2011年7月23日 【TMB3日目】 雨⇒みぞれ⇒晴れ⇒雨⇒雪

モッテ小屋(1,870m)⇒ セイニュのコル(2,516m)⇒ ラ・カセルメッタ小屋(2,365m)⇒ エリザベッタ小屋(2,195m)泊

今日はいよいよ国境越えの日。目覚めれば、生憎の雨。セイニュのコル(フランスとイタリア国境)は グラシエ針峰やモンブランの絶好の眺望ポイントなのだが、果たして、その姿を眺めることは出来るだろうか・・・・。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング
出発して間もなく、グラシエ村方面に大きな虹
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セイニュのコル 気温0度 国境を越える瞬間

セイニュのコルに到着したときの天候は、まだ雨。冷たい風も吹いていた。 地続きの国境をまたぐという経験は、もちろん日本では味わえないこと。しっかりポーズを作って記念撮影。 イタリアに入って初めて訪れる山小屋(ラ・カセルメッタ小屋)には資料館があった。

2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング
足早にイタリア側へ下る ラ・カセルメッタ小屋の資料館で情報収集と休憩 雨風の中でも平気で着替えるヨーロッパの人々
2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング 2011年7月18日(月)〜28日(木) ツールドモンブランとシャモニトレッキング
もうすぐエリザベッタ小屋
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エリザベッタ小屋到着

本日の宿泊地、エリザベッタ小屋に到着した。そのころには青空が広がり、散策に出掛けるには時間も充分あったが、毎日元気なメンバーも、少々お疲れ気味。 明日最終日を迎えるTMBの後にも、2日間のシャモニトレッキングが控えている。長期戦を考えると、ここは少し休んだ方が良さそうだ。濡れた装備を乾かし、シャワーや昼寝で有意義な充電時間を過ごすことにした。

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午後は青空が広がった 毎日、翌日の予習は欠かさない

 

2011年7月24日 【TMB4日目】 雪⇒曇り⇒晴れ

エリザベッタ小屋(2,195m)⇒ コンパル湿原(1,970m)⇒ シェクルイのコル(1,956m)⇒ ドロンネ(1,210m)<ゴンドラ> ⇒ クールマイユール(1,223m)⇒ シャモニ(1,036m)ホテル泊

目覚めると、7月も後半だと言うのに雪が降っていた。 珍しい夏の雪を見て、メンバーたちはいそいそと「冬山支度」をしている。

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一夜明けると雪景色に いざ出発!  

コンパル湿原を抜け、ミアージュ氷河やモンブラン山群が目の前に見えるはずのビューポイントに着く頃には、 上空の雲間から青空が、ちらっと覗くほどに天気は回復していた。しばらく待っていたが、山の頂を覆った雲は動きそうにない。 諦めてモンブランを背に下り始めたその時、「あ〜〜っ」とメンバーが奇声を発した。 何事かと振り替えると、モンブランがその山頂だけを出していた。わずか数秒の出来事だったが、 感動の対面だった。「またおいで、続きは次回に・・って言っているみたいだね」と誰かが言った。

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雲の切れ間から一瞬だけ山頂が見えた  トレイルランニングやマウンテンバイクも盛んなコース

最後はドロンネからクールマイユール(イタリア)の町へゴンドラで下り、4日間のTMBが無事終了した。 空腹の中たどり着いた本場イタリアンレストランは、私達のお腹を充分満たしてくれた。そして、心はもちろんTMBで満腹。

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ゴンドラで下山 クールマイユールの町のすぐ前に鎮座するモン・シェティフ(2,343m) 本場イタリア料理は絶品! モッテ小屋で仲良くなったマエル一家との再会
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色彩が綺麗な町並み
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2011年7月25日 【シャモニトレッキング2日目】 晴れ⇒曇り

シャモニ(1,036m)<ロープウェイとエレベーター> ⇒ エギュイ・デュ・ミディ(3,842m) <ロープウェイ> ⇒ シャモニ(1,036m) <ロープウェイ> ⇒ プランプラ(1,999m)<テレキャビン> ⇒ ブレヴァン(2,525m)⇒ シャモニ(1,036m)ホテル泊

山小屋生活から町に戻って一夜明けると、透き通るような快晴の空。 今日を逃して20日のリベンジは成るものか、とばかりに、再びエギュイドゥミディの展望台に向かった。 朝一番のロープウェイ車内は、登山やトレーニングへ向かう精悍な登山者たちで大賑わいだった。 高速エレベーターを経て展望台に到着すると、モンブランや針峰群、遥か遠くにマッターホルンまで、大パノラマが広がっていた。

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早朝ホテルの窓から見上げたモンブラン  朝一番のロープウェイで絶景の空中散歩 エギュイ・デュ・ミディ展望台
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テラスを乗越え氷壁を懸垂下降するクライマー  ここでも積極的にクライマーに話しかけるYFメンバー ザックの脇にはフランスパン、さすがフランス人
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5日前に見られなかったモンブラン  高所トレーニングへ向かうクライマーを見送る  ゴマ粒のように見えるクライマー達

大展望を心ゆくまで堪能した後は、余韻を引きずりつつも、ブレヴァンへ向かった。 先ほど登った山の対岸にあるミディ針峰やボソン氷河、モンブランの絶景は勿論のこと、ここでも岩壁の至るところに 張り付いているロッククライマーを見ることができる。針峰群をバックに浮遊するパラグライダーは絵になる光景だった。

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教会裏の山がブレバン  目を凝らすと至る所にロッククライマー パラグライダーと針峰群
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岩に目印のペンキを塗る学生たち

 

2011年7月26日 【シャモニトレッキング3日目】 晴れ⇒曇り

シャモニ(1,036m)<バス> ⇒ レ・プラ <ゴンドラ> ⇒ フレジェール(1,894m)<リフト> ⇒ ランデックス(2,385m) ⇒ ラックブラン(2,353m) ⇒フレジェール(1,894m)<ゴンドラ> ⇒レ・プラ<バス>⇒ シャモニ(1,036m)ホテル泊

バスでレ・プラの村へ移動し、今日は、雲上の湖ラックブランへ出かける。 前方にヴェルト、ドリュ、グランドジョラス、ダンデュジェアン、モンブランが聳える、素晴らしい展望のトレイルだった。 昨日に引き続き天候も申し分なく、最終日を飾るには相応しいトレッキングとなった。

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2011年7月27日

ジュネーブ空港 ⇒ ドバイ空港(経由地)

 

2011年7月28日

ドバイ空港 ⇒ 成田空港

 

 

氷河の山、ヨーロッパアルプスのトレイルは、よく整備され、歩きやすかったが、標高2,000〜2,500m弱といえども、時に厳しい表情を見せる偉大な山容だった。

毎日、毎日、歩くことによって、当初期待していた通りの素晴らしい体験をさせてもらった。 しかも、今回は天候が目まぐるしく変わったお陰で、10日間で冬の終わりから夏の初めまでの三つの季節を味わうことができたのはラッキーだったとも言えよう。 次回来たら、ここも歩きたい、あそこも歩きたいと、参加したメンバー全員が、今から新たな夢を膨らませているに違いない。

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