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今朝の成田空港での、肌を刺すような空気とは一変し、ここクラビでは暖かいそよ風が私たちを包んでくれた。迎えに来ていた送迎車に乗り込み、クラビ空港を後にする。私たちを乗せた車は、船着場へ向けて猛スピードで走ってゆく。四車線の道路には、信号機はほとんど無く、車、小型バイク、トゥクトゥク(三輪バイク)、それに人が溢れかえっている。東京のような電飾の賑やかさは無いが、町は活気に満ちている。やがて日は沈み、 街灯も無い暗い寂しい道をしばらく走ると、南国ムード漂うホテルの敷地内で車は止まった。ここからトゥクトゥクに私たちの荷物を山のように積み、その上に私たちは乗せられ、港まではしる。小型バイクの横にリヤカーを固定しただけの、このトゥクトゥクには乗車人数も、積荷の重量制限も無いようだ。裸足の少年が運転するトゥクトゥクは、狭く真っ暗な桟橋を軽快な音を立て走ってゆく。桟橋の先端には、テールボートが待っていた。「これに乗るの〜」「船に灯りがないよ」「この船、大丈夫〜」と期待と不安に胸を躍らせる私たちを横目に、何人かの現地青年達が手早く私たちの荷物を船に積んでゆく。用意ができたのか一人の青年が「俺に任せろ」と言わんばかりに、ひょいと桟橋から船に飛び移り、胸を張り、ニコニコ顔で手招きする。 |
船はゆっくりと大海原へと出てゆく。船着場から離れ、水深が十分となったところで、ゴーという音とともに、ボートは加速してゆく。波しぶきを上げ、風をきる。桟橋がぐんぐん離れて、灯りのない船着場は直ぐに闇の中に消えていった。目の錯覚だろうか、波しぶきの中に小さな光が溢れている。なんと美しい光景だろう。私たちの船の下に星がちりばめられているではないか。まるで、宇宙船の窓から、流れ行く星を見ているようだ。この南国の風と夜光虫の神秘的な光によって、私たちの心は完全に解き放たれた。さあ、これから、なにも考えずにクライミングに没頭する日々をおくるのだ。しばらく夜光虫に酔いしれた私たちの目の前に、暗闇にそびえる圧倒的なプラナンの岩々が姿を現し始めた。誰も何も言わない。無言の時がしばらく続く。岩々を見つめる皆の視線の先に、明日からのチャレンジに対する、大きな期待が見える。そして、私は、その輝く瞳の奥に、登れても、登れなくても、また、目標を達成できても、できなくても、力の限りチャレンジする皆の姿を、既にこの時点で見ていた。今年も皆のチャレンジが数々のドラマを生むだろう。そして、私は皆のチャレンジ精神に多くを学ぶことになるだろう。この時、私のテンションは絶頂に達していた。 |
最終日、それぞれの目指す目標や内容は違っていても、何かを追い求める皆の心は一つとなっていた。最高のステージが完成したのである。それは、互いのチャレンジを認め合い、ともに喜び、ともに感動し、応援し合う素晴らしいステージである。最後のチャレンジを終えた皆の姿に、明日を切り開こうとする、また、可能性を見出そうとする人間の強さ、素晴らしさを感じた。チャレンジ精神さえあれば人はどこまでも進化するのだ、と今回参加したメンバーに再確認させてもらった。私は今年も皆から勇気と希望をもらいプラナンを後にすることができた。皆ありがとう。そして、お疲れ様でした。(2010.01.16〜23) |