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6月19日(金)

ルフトハンザ航空で成田から直行、ミュンヘンに定刻どおり到着。 機体は着陸するとすぐに停まり、キャビンアテンダントたちが通路をバタバタとトイレに向かっていった。 消火器を持っている人もいる。そして何か焦げた臭い。 しばらくして、機内の安全を確認したというアナウンスがあり、ふたたび機体はゲートに向かってゆっくりと動き出した。 ゲートに降りて窓から外を見ると、消防自動車が15台、乗ってきた飛行機を囲んでいた。 結局、何が何処で焦げていたのかは知らされなかったが、入国審査もあっけないほど簡単に済み、無事にミュンヘン入りした。

レンタカーを借りて空港から約1時間、シティのほぼ中央に位置するB&Bに到着。 夜8時を回っていたが、まだ明るい。 部屋に荷物を置いて、まずはドイツビールを目指して外に出る。 B&Bの斜め向かいのBARでビールとソーセージなどの地元料理を頂く。

6月20日(土)

アウトバーン(高速道路)の入口まで迷うことも無く入り、南下する。 途中、インスブルック付近のパーキングに停車。 トイレは有料。0.50ユーロでお釣りも出してくれる。

ドロミテ地方に入り、アウトバーンを降りてから東に進むと 約1時間ほどで1週間滞在するアパートメントがあるセルバ・ガルデナに到着した。 ガルデーナ谷の一番奥に位置するこの町は、他の町同様、 インフォメーションセンターも教会もスーパーマーケットもひとつずつ。 スキー場に囲まれており、ホテルや長期滞在型アパートメントが点在している。 リゾート地というにはあまりにも小さく、静かな町だ。 この町を過ぎるとすぐ峠道になり、セッラ山塊やマルモラーダなどの名だたる岩峰がそそり立つ。 サッソルンゴは滞在したアパートメントからも見える。

アパートメントで荷を解き、スーパーマーケットに出かける。 アパートメントのキッチンには食器やお鍋などが全部揃っているので、買出しするものは食材と飲み物だけでいい。 スーパーには思いのほか野菜や果物も豊富。 ハムやサラミは希望の枚数をスライスしてくれる。メンバーが自慢の腕を振るい、楽しく美味しい夕餉となった。


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岩峰に囲まれた町のアパートメントに到着

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食事は自炊


6月21日(日)

ドロミテ初のトレッキングは、 万年雪をいただくドロミテ・アルプス最高峰マルモラーダ(3342m) と平行してつらなる山並み(カペッロ尾根)の山腹をトラバースするルート。 スタート地点はポルドイ峠だ。

セッラ山塊を四角く取り囲むように峠道が走り、片側1車線の道幅はさして広くなく、 ヘアピンカープの連続だがカーブミラーが一切無い。 ポルドイ峠はその峠道の東と南の2辺を走り、セッラ山塊の南側に位置している。 セッラ山塊と道を挟んだ反対側から朝8時にスタート、すぐに色とりどりの可憐な花たちに出迎えられる。

日本の山に鳥居や祠があるように、 ドロミテの山には十字架に貼り付けられたキリスト像が必ずと言ってよいほど祀られている。 尾根の南側に出てきたところでマルモラーダがその姿を現す。 白く大きなその山は、スキー場こそ終了しているが、まだ冬の様相をしている。

途中、山小屋のベンチで、朝、作ってきたサンドイッチを食べたり、出会う人と話をしたり、とのんびりと歩き、 12時にちょうど半分の地点に到着した。 尾根を越えて、帰りは北側の山腹を歩く。 トレイルには雪が大分残っている。 アルペンローズの花咲くトレイルの下を走る峠道のヘアピンカーブをバイクの団体が競って走っていた。


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セッラ山塊(左)サッソルンゴ(中)カペッロ尾根(右)

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トレイルランナーにはよく出会う

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一見つつじに似たアルペンローズの花は小さなシャクナゲのようなつくりをしている


6月22日(月)

今日は、セッラ山塊の北側の峠道を走り、コルバラの町まで出かける。 インフォメーションセンターで手ごろなトレッキングルートを案内してもらい、 小さなゴンドラとチェアリフトを乗り継いでスタート地点に到着した。

標高2100m付近の草原を歩く。セッラ山塊とは東辺の峠道を挟んだ向かい側の山並みだ。 ここでも、可憐な野の花の向こうに大きなセッラ山塊を眺めながらのトレッキングとなる。

月曜日ということもあってか、出会う人がほとんどいない。 特に急な勾配もなく、乗ってきたゴンドラの隣に位置するリフトの頂上駅まで歩き、そこから標高1568mの町まで一気に下る。 標高によって、咲いている花がどんどん移り変わっていく。

車を置いてきたゴンドラ乗り場に戻り、カプチーノを一杯いただいてから帰路に着いた。


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6月23日(火)

今日は、いよいよ今回のメインイベント第一弾、アルペ・デ・シウジからテッラロッサ山の向こう側にある山小屋を目指す。 アルペ・デ・シウジはドロミテ地方の西端にある標高2000mの丘陵地帯で、 広大な放牧地にはカウベルを首に下げた牛の群れが、咲き乱れる草花のなかに点在している。

シュピッチュビューエルのリフト乗り場に車を置いたのが8時30分。 チェアリフトに乗って標高1900mの地点まで登る。 草花に見とれながら草原を歩き、テッラロッサ山からサントネール山まで連なる尾根に登る手前の川(標高1800m)まで下る。 途中、立派な山小屋がいくつもあって、感じの良いオープンテラスのレストランが併設されている。

1時間ほどかけて川まで降りると、ここからは2400m付近まで一気に登る。 針葉樹の森の間から今歩いてきた草原が見える。森林限界となると、登りは次第にきつくなってくる。 12時ちょうどにサンドイッチの昼食をとったのが尾根を登りきる少し手前。 このあたりからだんだん雲行きが怪しくなってきた。 東の空に厚い雲が迫ってきたが、雲が高かったので見通しは悪くない。 歩きを再開すると小雪が舞いだしてきた。

尾根にたどり着くと、ここからはほとんど平坦な道をテッラロッサ山の方向に歩いていく。 振り向くとひときわ立派なボルツァーノ小屋が建っていた。お城か高級ホテルのようだ。 天候が悪化しそうなのでボルツァーノ小屋には寄らずに先を急ぐ。

雪は次第に激しくなり、風も強くなってきた。 私たちを追い越していった何組かのトレッカーたちは、日帰りの行程らしく、どんどん来た道を帰っていく。 「雪がひどくなるから、君たちも帰りなさい」と助言してくれる男性がいたが、 ティレス小屋に予約をとってあるので、先に進んだ。 目指すティレス小屋は向こうに見えるギザギザのテッラロッサ山の向こう側だ。

尾根の南側に入ると、風が収まり歩きやすくなってきた。 はるか向こうに目指すティレス小屋が見えた。 あとは、この尾根の下をトラバースするだけだ。 風が静かになってきたので、初対面の花たちにも目が止まるようになる。 小屋に到着したのは15時ちょうど。休憩を含め約6時間のトレッキングだった。


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チェアリフトに乗っていよいよアルペ・ディ・シウジに入る

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写真で見た風景が広がる

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針葉樹の森を登り振り返るとシウジの草原が見渡せる

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あのギザギザの尾根の向こうに今日の宿泊地ティレス小屋がある

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標高2475mに建つ立派なボルツァーノ小屋


与えられた部屋は、二段ベッドが並ぶドミトリーで男女混合。 1階のダイニングスペース以外には暖房設備が無いようで、ドミトリー内は結構寒かった。 少し疲れたので、ベッドに入り一休み。洗面所は近未来的なつくりで明るく清潔だった。

食事は前菜、メイン、デザートのコースでそれぞれ3種類から1品ずつ選ぶことができる。 どれも美味しかった。天候は相変わらず横殴りの雪が降り、うっすらと積もりだした。気温は2度。


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初めて泊まるドロミテの山小屋


6月24日(水)

朝食を済ませ、9時に山小屋を出る。昨日の雪も解け、天候もまずまず。 ここからプリンシプ小屋、さらに、アンターモア峠からアンターモア小屋までのルートには残雪が多く、 今回の全行程の中で一番の難関となった。

岩肌を登って11時、モリグノン峠にたどり着くと、行く先のトラバースするトレールに雪がしっかりついている。 ここでアイゼンを装着、ストックを二本持って歩き出した。 遠目に見るよりも傾斜はさほどきつくもなく、踏み跡がしっかりついている上、アイゼンもよく噛む。 それでも慎重に歩を進め、プリンシプ小屋に到着。

「昨日の雪で洗濯物が乾かないよ」と英語を話すアルバイトの青年に話を聞く。 今年は雪が多く、雪解けが遅いため、今日現在プリンシプのトイレは使えない。 小屋のヘリポートには軍のヘリコプターが毎日、練習生の訓練飛行のためにやってくる。 この小屋のオーナーは山岳ガイドなので、 フェッラータ(クサリ場を自己確保しながら歩くハードなトレッキング)のコースをガイドしているが、 日本の山岳会を紹介してくれないか、などなど。小一時間もおしゃべりをしてしまった。


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ティレス小屋からまずはプリンシプ小屋を目指す

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プリンシプ峠の岩峰の根元に建つプリンシプ小屋


ここからアンターモア峠まで登り返し、そこから一気にアンターモア小屋までは下り。 この下りルートにも雪がついており、最初の急斜面はなかなか難関だった。 雪と岩と砂地が混在し、危険はないが歩きにくい。 だんだんと傾斜がゆるくなり、落ち着いて歩けるようになっても、雪は小屋の手前まで続いていた。


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峠の右側にそびえる岩峰を越えていくルート(フェッラータ)もある

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アンターモア小屋に到着したのが16時50分。 小屋には濡れた靴に詰める新聞紙が用意されており、暖房設備の廻りには濡れた靴や靴下がたくさん置いてあった。


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難所を越えてホッと一息つき小屋の周囲を眺める


6月25日(木)

小屋を8時に出発。下るにつれて次第に残雪もまばらになってきて、あたりは初夏の景色に戻ってきた。 眼下には牧草地と牛たちが見える。どんどん下り、牧草地を抜けて川を渡ってアルペ・デ・シウジに降り立った。

二日間歩いた岩と雪のトレイルから懐かしい牧草地に帰ってきた感じだ。 広い広い牧草地を3日前に乗ったリフト乗り場まで帰るのだが、なかなか遠い。

15時10分。ポツポツと雨が降り出したころやっとリフト乗り場に到着した。 すぐそこに雨雲があって、かなり激しく降っている様子が分かる。 その雨雲がこちらに来ないことを祈りながら、リフト乗り場のレストランでお茶を頂き、一休みした。

歩いても駐車場まで戻れるのだが、そこに乗り物があるとやはり乗ってしまう。 下りもチェアリフトに乗って、2泊3日の山小屋めぐりの1周を完了した。


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あたりは懐かしい初夏の景色 ディーラーホテル

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アパートメントに戻りベランダから見た二重に虹


6月26日(金)

ドロミテ入りして5日間、歩き続けてきたので、今日はレスト日。 カンピテッロの町までドライブした。 壁に美しい装飾画が描かれた建物が多く、ガルデナの町よりも大きく、人通りも多かった。

レスト日といいながら少しだけ歩くことにした。 昨日休憩したアルペ・デ・シウジのディーラーホテルまでの道が、実はこの町から伸びている。 その道沿いにある最初に出てくるレストランまで歩き、お昼ご飯を食べよう、ということになった。 イタリアに来てまだピッツァを食べていない。急なのぼり坂をゆっくりお散歩。 小一時間ほどでついたそのレストランは、なんとオープンが明日だと言う。残念。

下りは別の道を通り、村の民家の脇を通るようにしてできたトレールを歩いてカンピテッロに降りてきた。 駐車場の隣にあったピッツァ屋に入り、本場イタリアの味を楽しんだ。


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ドロミテの建物の壁はこまめに塗り替えるのかどれも真新しくみえる

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民家の壁にも装飾が施されている


6月27日(土)

一週間借りていたアパートメントを朝7時に出て、セストの町を目指す。 メインイベント第2段、トレ・チーメ・ディ・ラバレドに迫るコースをたどる。

一般のなどで多くあるのがトレ・チーメの南側から入って、反時計回りに周遊するコース。 今回、YFクラブがたどったのは、トレ・チーメの北東の位置がスタートポイントで、 宿泊先のロッカテリィ小屋まで標高差1000mのルートだ。

歩き出してすぐに小雨が振り出した。 体が冷えるといけないのでレインウェアのジャケットだけを着る。

ドロミテのトレッキングルートには赤と白のバックカラーにルート番号が岩に書かれたマークがある。 今日のルートは102番。歩きやすいトレールは、3000m近い岩山に挟まれたサッソベッチオの谷を遡る。 ここでも小屋まで行って日帰りするトレッカーも多く、私たちを抜かしていく人ばかりだ。 雨はさほどひどくならなかったので、標高差に負けないよう、ゆっくりと歩く。

歩き始めて4時間、トレ・チーメとロッカテリ小屋が目の前に現れた。 その三姉妹は巨大で、絶妙なバランスの配置で立っていた。

ロッカテリ小屋では今回のイベントで初めて日本人に会った。 山岳写真撮影を共通の趣味としているグループで、夕焼け、朝焼けのトレ・チーメを撮影するべく、 重い三脚を持って旅をしているそうだ。


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ルート#102は変化に富んでいる上、歩きやすい

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トレ・チーメとロッカテリ小屋


6月28日(日)

朝から快晴。小屋のオーナーに、「こんな天気は1年のうちにそれほどない」と言わしめるほど、 空には雲ひとつなくトレ・チーメが日の光を一杯に浴びている。

朝8時に小屋を出発。小屋から南下して一旦トレ・チーメに接近する。 壁に張り付いているクライマーたちがかろうじて見える。

トレ・チーメとそれを撮影する日本人カメラマンたちに別れを告げて、今日のルートは104番。 小屋からはもうひとつ101番ルートがあり、ここはセストとトレチーメを往復するランニングレースのコースにもなっている。 そちらのコースを歩いてきた団体が向こうの高い岩肌(標高2500m近辺)をトラバースしているのが見える。 私たちは一旦、2300mまで降りてきたが、再度、登り返してそのあたりから101番に合流することになる。

雲が出てきたが、雨は降りそうにない。 楽しみにしていたエーデルワイスは2週間ほど時期が早いようで、 今回のトレッキングルートでお目にかかることはなかった。 心地よく疲れてきたところでセンジア小屋に着いた。入口に丸い植木鉢があって、中にエーデルワイスが花を付けていた。


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小屋を振り返る (右)写真中央、赤いクライマーがみえるだろうか

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岩肌をアリの行列のように歩くトレッカーたち


14時30分、駐車場手前の小屋に到着。 山間部にあるBARでの休憩は、ここが最後となる。 のどを潤し、やり遂げた感に浸りながら、ホッと一休み。

車をピックアップしたらセストの町から北上し、オーストリアのキッチュビューエルまで2時間のドライブだ。


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キッチュビューエルの町

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キッチュビューエルの町


今回のイベントは天候にも恵まれたため、予定していたトレールの全てを制覇することができました。 例年に比べ残雪が多かったことは予測していましたが、むしろ花の季節にはピッタリはまっていたようです。

夏本番一歩手前の時期ということもあって、渋滞や混雑に巻き込まれることもなく、ゆったりのんびりのトレッキングを思う存分楽しみました。 ドロミテは予想を超えて大きく、歩くトレイルには尽きることがありません。 次回は、フェッラータにも挑戦して、と、すぐにでも計画をたてたくなってしまいました。

<YFサポーター>




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